発達障碍+毒親育ちの私が生きる世界は、本来なら味方である筈の両親が敵に回り、誰とも分かり合える事も無い孤立無援の世界です。また、いくら努力をしても成長せず、自信を持てないという不毛な世界でもあります。
ただの発達障碍なら親が敵に回る事は無く、ただの毒親育ちなら能力的に生きていけないという事はありません。でも、味方と能力のどちらも無いというのは、本当に、本っっっ当にキツいんです。
幸いにも私は独り立ちが出来ましたが、世の中には頑張ってもどうにもならず、全てを諦めて死んだように生きていたり、自暴自棄になって身を持ち崩してしまう人の方が多いんです。
例えば、私が郵便局で面倒を見ていたアルバイトの男性は、母親が感情に任せて暴言を吐きまくり、父親は無力で見て見ぬを振りをするような家で生まれ育ったと聞いています。
彼は耳で聞いた話を理解するのが極端に苦手だったので、恐らくは発達障碍を抱えていたのだろうと思います。私は彼が話を理解するまで、根気よく、繰り返し説明するようにしていましたが、そこまでする人は他に誰も居ませんでした。
それで妙に懐かれてしまって、仕事以外の話もするようになったのですが、心を殺してひたすら耐えるだけの世界に生きる彼と、怒りと復讐の世界に生きる私が、お互いを理解し合えるようにはなりませんでした。
気がついたら、私が彼の為に発した数々の言葉は、周囲の人間に暴言として伝わっていました。それで彼と関わるのが嫌になり、それ以降は必要な話しかしなくなりました。
数年後、彼は正社員になって他局に配属されましたが、集配課は雑な人間が多く、同じ説明を聞き返せるような職場ではありません。その時に、彼は機能不全の実家から出られず、職場でも嫌われながら我慢し続ける人生が確定したのです。
私は彼のような人間を活かす為に班長になろうとした事もありますが、その痛々しい向上心に複数のパワハラ上司が付け込んできて、最悪の形で使い潰される羽目になりました。
日本社会は、誰からも迷惑をかけられず、誰からも急かされず、誰にも責められない優しい世界ではありません。むしろ、生まれついての悪党が何不自由無く育ち、支配者として大成する邪悪な構造を持つ社会だと言えましょう。
また、同じハンディキャップを抱えて、似たような世界に生きている人だからと言って、必ずしも理解し合えるようにはなりません。親しい関係になれるほど強い縁のある人との出会いは、それほど多くないのです。
でも、私が生きているうちは、似たような世界に生きる人達に手を差し伸べたいと思っています。何故なら、手を差し伸べるのを止めた時点で、私の世界は孤独で不毛なだけでなく、邪悪な色に染まってしまうからです。